在宅介護の限界からできる事 ケアマネからの提案

在宅介護の相談室

                  ~頑張りすぎているあなたへ~

     

 


 「家で過ごしたい」「なるべく家で過ごさせたい」
 ――居宅のケアマネをしていると、ほとんどの方がそう話されます。
 その一方で、長く在宅介護を続けてこられた方からは
 「自分の方が先にどうにかなりそうだった」
 「(施設に)入ってくれて、ほっとした」
 という言葉も多く聞かれます。

 

愛情から始めた介護が、別のものに変わってしまう前に。
 「在宅介護の限界」とその先のできる事について、一緒に考えてみましょう。

 1.在宅介護の「限界」とは?――兆候サインを知ろう 

在宅介護は、愛情だけで乗り切れるものではありません。

日々の生活に寄り添う中で、身体にも心にも、さまざまな“負担のサイン”が少しずつ積み重なっていきます。

まず知ってほしいのは、

「限界を感じること」は悪いことではない、ということです。
心や体、生活の中に現れるサインを知ることが、介護を続ける第一歩になります。

ご自身の状態を見つめることから始めてみましょう


 ◆身体に現れるサイン
 □ 睡眠不足が続く
 □ 腰や体全体の痛み
 □ 休めない・眠れない・食欲がない

◆心に現れるサイン
 □ いつもイライラしてしまう
 □ ぼんやりしてしまう
 □ 気づくと涙が出ている
 □ 感謝されない・拒否されることの辛さ、それを理解してもらえない孤独感
 □ 怒ってはいけないと思いながら、つい口調が荒くなり後で落ち込む
 □ 他の家族に頼れない

◆生活に現れるサイン
 □ お金の負担が大きい
 □ 仕事を辞めなければならないのかと悩む
 □ 育児と違い、介護がいつ終わるのか分からない将来への不安
 □ 一日が介護で終わり、自分の生活がない
 □ 他の家族との関係が悪くなってきた


あなたはいくつ当てはまりましたか?

これらはすべて、「在宅介護の限界」のサインです。
 ✅3つ以上当てはまったら「要注意」

✅5つ以上なら「限界が近い」サイン


  「限界と」言っても良いということ。在宅介護には“限界”があります
それを認めることは、決して弱さではありません。

 

  〇 誰に相談してよいのか分からない、孤立している?

  〇打ち明けた後、どうなるのか分からない不安?

  〇「自分がやらなければ」と思い、他人に任せることへの罪悪感?

  〇ほかの人は、ちゃんとできてるのになぜ私はできないのか…自己嫌悪?

 

あなたはどうですか?

心や体の悲鳴を無視して頑張り続けると、介護も自分自身も壊れてしまいます。
「誰に相談していいか分からない」「他人に任せるのは悪いこと」そんな思い込みが、状況を悪化させることも。

在宅介護は外から見えにくいため、悩みを一人で抱え込みやすいのです。
在宅介護といっても、一人一人状況が違います。ほかの家と比べても答えは出てきません。


 だからこそ、自分を守ることが大切です。
まずは、「限界を感じるのは自然なこと」と認めてください。そこから次の一歩が始まります。

2. 限界を迎えたとき、して欲しいこと

 

「限界かもしれない」と気づけたあなたは、すでに最初の一歩を踏み出しています。
大切なのは、「これ以上は無理」と思ったその気持ちを見過ごさないこと。「我慢」ではなく「立ち止まる勇気」です。

ここからは、限界を感じたときに試してほしい3つのステップをご紹介します。

 ①まずは深呼吸。限界を認める

「限界」と思ったら、まずは深呼吸を。
 強いストレスが続くと、体は緊張し呼吸が浅くなります。
 「吸えてもゆっくり吐けない」―それが、心身の限界サインです。

 ゆっくり吐くことで、少しずつ冷静さを取り戻せます。

②言葉にして伝える勇気を持つ

「今、自分は疲れている」「誰か助けてほしい」と、
 独り言でも構いません。声に出してみましょう。
 言葉にするのが難しければ、メールやメモでもかまいません。
 大切なのは「伝えること」です

感情を外に出すことで、心の整理が始まります。

そして、どうかケアマネに相談してください。
あなたの“しんどい”を、具体的な形に変えるお手伝いができます。

③ケアマネに相談するという選択

ケアマネは「介護の相談役」であり「支援チームの調整役」です。
あなたの思いや状況を整理し、今後の介護体制を一緒に考えます。
施設利用、福祉用具、主治医連携など、複数の選択肢を提案できます。
ケアマネとつながることが、「一人で抱えない介護」への第一歩です。

 その結果、介護する人も、介護を受ける人も変化します。
 イライラが減り、介護以外の時間が生まれ、笑顔が戻ってきます。
 それができれば、罪悪感は少しずつ消えていきます。
 もう一度、深呼吸をしてみましょう。
 今度は、ゆっくり息を吐けるはずです。

3.ケアマネに相談するとどう変わる?

「相談しても、どうせ状況は変わらない」と思っていませんか?
でも実際には、ケアマネに相談することで、状況が大きく変わるケースもあります。

ここでは、在宅介護の「限界」を迎えたご家族が、ケアマネとの連携によって少しずつ変化を取り戻していった事例を2つご紹介します。

 事例から見る、限界から“変化”した家族

【事例①】

要介護者の夫を一人で抱え込んで介護していたAさん。チームで支える在宅介護へ

 Aさんは、要介護2の夫を自宅で介護していた。
 トイレや入浴介助のたびに体を支え、夜間も何度も起こされ、睡眠不足が続いていた状態。
 「もう限界かもしれない」と感じ、ケアマネに相談。

ケアマネからの提案

・ デイケア・ショートステイで、休息 時間を確保。入浴などの重介護はサービスで行う。ショートステイは、今後施設入所のための布石でもあります。

・ 住宅改修や福祉用具で介護負担を軽減-必要なところに手すりを設置。歩行器使用で、自宅内の移動をスムーズにする。介護ベッドを利用し、起き上がりや立ち上がりも、本人の力を出しながら行う。

・ 主治医と連携し夜間頻尿の改善を検討

・ 今の状態と介護度があっていないと思われたため、介護度の見直しを申請

本人がサービス変更に強い拒否を示したため、ケアマネが取った次の作戦

・ あらかじめ主治医と連絡を取り、受診時主治医からサービスの必要性を説明してもらった

・ 遠方の息子さんに連絡を取り、息子さんからも説得してもらった

本人も、そこまで言うならと渋々了承してくれました。

結果、Aさん夫婦を支援するチームができ、今後の新しい体制が整う。
 「もっと早く相談すればよかった」「今まで、夫の介護に何も聞いてこなかった息子が気にして、時々帰ってきて様子を見たり話を聞いてくれるようになった」「自分がと思っていたけど、皆さんが色々してくれて助かっている」

その後のAさんの言葉です。Aさんの表情も和らいでいました。

 【事例②】

認知症の妻を支えるBさん。自身の体調管理もできなくなった状態。施設入所を視野に入れながら、小規模多機能型を利用。笑顔を取り戻す。

 Bさんの妻は介護2。身体は元気でも認知症が進み、徘徊や怒りっぽさなど出ていたため、対応が難しくなっていました。
 訪問したケアマネに「もうどうしたらいいか分からない」「カッとなって、手が出そうになる」「妻が可哀そうでたまらん」と本音を吐露。

ケアマネからの提案

・ 認知症専門医にかかり、認知症進行予防。怒りっぽさなど感情の安定や睡眠状態の改善を目指し薬の調整

・ 日中の活動を増やし、適度に疲れ夜間の睡眠を促す。家族の休息も確保するためにも、デイサービスやショートステイの利用を検討→場所や対応する職員が変わると混乱し余計に落ち着かなくなることが予想されたため、小規模多機能型居宅介護を利用

・ 行政の認知症の方の見守りサービスに登録

・ Bさん自身の体調や生活の確認

「自分が見ないといけない」という思いが強かったBさんも、ケアマネとの話を重ねる中で、主治医に相談したり、小規模多機能型事業所を見学に行き、体制を変えることができました。今ではBさんも小規模多機能型事業所を楽しみ、次の段階(グループホーム入所)への準備ができました。

 介護は、誰かの犠牲のうえに成り立つものではありません。
 「本人と家族が安心・納得して暮らせる生活」を目指すことが大切です。

 最も危険なのは「限界を超えるまで我慢してしまうこと」です。

 あるケアマネも「本人の入院より、家族の入院のほうが怖い」と言っていますしね

 4.介護を続けるために大切なこと


限界を感じたときは「休む合図」です。
在宅介護は、家族の愛情と努力によって成り立っています。
だからこそ、「もう限界かもしれない」と感じるのは、
頑張りが足りない証拠ではなく、「十分に頑張ってきた証拠」です。

限界を感じたら、
それは「休むべきタイミング」であり、「支援を受ける合図」です

◆考え方を少し変えてみましょう

  •   「まだ我慢できる」「まだ大丈夫」
      → “まだ”を“ここまで”に変えて、「ここまで頑張った」と言い換える
  •   「休むこと=介護を放棄すること」→介護を休むことを肯定し、介護以外の時間を大切にする
  •   「施設に入る=家族を見捨てる」
      → 施設に入っても、家族の役割はあります。新しい関わり方をしていくことが、次の一歩になります。

話し合いと準備が、あなたと家族の“安心” をつくります

5.まとめ

在宅介護の限界を感じたら、まずは深呼吸。
そして、「自分を守ること」を考えてください。

ケアマネは、あなたと家族を支えるパートナーです。
小さな一歩が、あなたと家族の笑顔を取り戻すきっかけになります。

あなたが笑顔で元気でいること――それが、いちばんの“介護”です。
疲れたときは、どうか一人で抱え込まず、
「少し話を聞いてほしい」と、ケアマネに連絡してみてください。

その一歩が、きっと明日を少し軽くしてくれます。
あなたの明日が、少しでも明るいものでありますように。

 

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